STORY STAY
パジャマのプロポーズ
『パジャマのままでいいから。
全て向こうで揃ってるから。』
土曜日のお昼過ぎ。疲れて寝過ごした朝。
急に彼からの一言。
彼はとにかく車に乗れと言った。
いやいや女性にとっては準備は大事だから。
急に旅行に行こうと言われても。
ちょっと喧嘩ムードになった車の中で
たどり着いたのが、黒い建物の前。
ちょっとなんなの?
ここどこ?
まあいいから、ここに入るから。
と背中を押される。
彼が黒い扉を開けた時に広がったのは、
目の前に広がる海。
そして、彼が一言言った。
『僕たちの新しいスタートをここから始めるから』
そうやって始まった私たちの一泊二日のビーチハウス。
私のクローゼットの中にあった洋服は
お気に入りのものが選別されそこに準備されていて、
必要なビーチサンダルまで用意してくれていた。
その後はお酒を飲んだり
好きな音楽を聴いたり。
普段の家と同じような時間を過ごしつつ、
目の前の海が綺麗で、静かな時間が流れていく。
夕陽に染まる海を見て、ぼーっとしてた頃、
なんだかそわそわと彼が出たり入ったりしている。
目の前の海辺の岩場に急に彼が現れた。
気づかなかったけど、真っ赤な薔薇の花でハートの形が作られている。
彼がその後ろにひざまづき、
私の方を見上げて、大声で一言言った。
『僕と結婚してください』
えっ。急に。
え、私、出かけると思ってないからパジャマのままなんだけど。
こんな姿で、人生が変わる瞬間を迎えちゃったの???
と思ったのは束の間、
でも心は素直に反応してた。
『いいよ!』と、笑って答えてた。
でもそのあとは大爆笑!
プロポーズって感動すると思ってたけど、
私たちにとっては予期しないことの連続で、
彼は、嬉し泣きをして『はい!』という言葉を期待してたらしい。
いやいや、そんなのないからと。
そんなことを話しながら、
そのあとはずっと大笑いしてお互いはしゃいでた。
いつもこんなかっこいいことをしない、
休日はずっとスウェットのだらだらな彼が、
白い清潔なシャツを着ていた。
随分前から
私のために準備してくれたんだな。
それが一番嬉しかった。
END.